「出向」は出向元企業に籍を残したまま別の会社で働くことで、出向期間が終われば戻ることが前提です。「転籍」は元の会社との雇用関係を解消して別の会社に移ることで、実質的には転職に近い形態です。「戻る前提があるかどうか」が最大の違いです。
| 項目 | 出向(在籍出向) | 転籍(転籍出向) |
|---|---|---|
| 元の会社との雇用関係 | 維持される | 解消される |
| 戻る前提 | あり | なし |
| 本人の同意 | 原則不要 | 必須 |
| 雇用関係 | 二重(出向元+出向先) | 転籍先のみ |
| 退職金 | 出向元で継続 | 転籍時に精算されることが多い |
| 実質的な意味 | 一時的な異動 | 転職に近い |
「出向」の意味と使い方
「出向」は、出向元企業の社員が、出向元との雇用関係を維持したまま、別の会社(出向先)で働く形態です。正式には「在籍出向」と呼ばれ、出向元に「籍」を残したまま働くことを意味します。
出向の特徴は、出向期間が終われば出向元に戻ることが前提となっている点です。労働者は出向元と出向先の両方と雇用関係を持ち、出向先の指揮命令を受けて働きます。
出向は就業規則に定めがあれば、原則として本人の同意なく命じることができます。人材育成、キャリア開発、技術移転、雇用調整など、様々な目的で活用されています。
- 来月から3年間、子会社へ出向することになった。
- 出向期間を終えて、来月から本社に戻る予定だ。
- 若手の育成を目的に、グループ会社への出向制度を設けている。
「転籍」の意味と使い方
「転籍」は、元の会社との雇用関係を解消し、別の会社と新たに雇用契約を結ぶ形態です。「転籍出向」とも呼ばれますが、出向元に戻ることは想定されていないため、実質的には転職に近い形態です。
転籍の特徴は、元の会社を「退職」する点です。退職金は転籍時に精算されることが多く、転籍後は転籍先の就業規則や給与体系が適用されます。
転籍は労働条件が大きく変わる可能性があるため、本人の同意が必須です。会社が一方的に転籍を命じることはできません。
- グループ会社への転籍を打診されたが、条件を確認してから返答することにした。
- 定年後は関連会社に転籍して働く社員も多い。
- 事業譲渡に伴い、該当部門の社員は譲渡先へ転籍することになった。
語源・由来
「出向」は「出」(出る)と「向」(向かう)を組み合わせた言葉で、ある場所から出て別の場所へ向かうことを意味します。企業間の人事異動を指す言葉として、戦後の企業グループ経営の発展とともに広まりました。
「転籍」は「転」(移る)と「籍」(戸籍、所属)を組み合わせた言葉で、籍を移すことを意味します。もともとは戸籍を別の場所に移すことを指しましたが、人事用語としては雇用関係の所属を移すことを指すようになりました。
本人の同意の違い
出向と転籍では、本人の同意に関する扱いが大きく異なります。
出向の場合
出向は、就業規則や労働契約に出向に関する規定があり、出向先での労働条件が著しく不利益でない限り、原則として本人の同意なく命じることができます。これは、出向元との雇用関係が維持され、出向期間が終われば戻れることが前提となっているためです。
転籍の場合
転籍は、元の会社との雇用関係が解消されるため、本人の同意が必須です。会社が一方的に転籍を命じることはできず、本人が拒否すれば転籍は成立しません。労働条件や退職金の扱いなど、転籍の条件を十分に確認したうえで同意するかどうかを判断することになります。
退職金の扱いの違い
退職金の扱いも、出向と転籍では異なります。
出向の場合
出向では出向元との雇用関係が維持されるため、退職金は出向元で継続して積み立てられることが一般的です。出向期間も勤続年数に算入されます。
転籍の場合
転籍では元の会社を退職する形になるため、転籍時に退職金が精算されることが多いです。転籍先では新たに退職金の積み立てが始まります。ただし、グループ会社間の転籍では、勤続年数を通算する制度を設けている場合もあります。
よくある質問
「在籍出向」と「転籍出向」の違いは?
「在籍出向」は出向元に籍を残す出向で、一般的に「出向」といえばこれを指します。「転籍出向」は出向元を退職して移籍する形態で、「転籍」と同義です。
「転籍」と「転職」の違いは?
どちらも元の会社を辞めて別の会社で働く点は同じですが、「転籍」は会社の指示や提案によるもので、多くはグループ会社や関連会社への移動です。「転職」は自分の意思で別の会社に就職することを指します。
「出向」から「転籍」に変わることはある?
あります。最初は出向として別会社で働き、その後本人の同意を得て転籍に切り替わるケースがあります。この場合も、転籍には本人の同意が必要です。
「転籍」を拒否したらどうなる?
転籍は本人の同意が必要なため、拒否すれば転籍は成立しません。ただし、会社との関係や今後のキャリアへの影響を考慮して判断する必要があります。