「八百万の神」(やおよろずのかみ)は、日本の神道における数多くの神々を総称する言葉です。「八百万」は実際に800万という数を指すのではなく、「数えきれないほどたくさん」という意味を表します。山・川・木・岩など、自然のあらゆるものに神が宿るという日本古来の考え方を象徴する言葉です。
「八百万の神」の意味
「八百万の神」は、日本神話や神道において無数の神々が存在することを表す言葉です。
日本では古来、太陽・月・風・雷といった自然現象から、山・川・海・岩・木々、さらには台所やトイレ(厠)に至るまで、あらゆる場所や物に神が宿ると考えられてきました。こうした森羅万象に神の存在を認める考え方を総称したのが「八百万の神」です。
1. 「八百万」は実数ではない
「八百万」は文字通りの800万という数を意味するのではなく、「非常に多い」「数えきれない」ことを表す比喩的な表現です。江戸時代の国学者・本居宣長も『古事記伝』で「八百万は、数の多き至極を云へり」(非常に多いことを言うのである)と解釈しています。
2. 日本の多神教的な世界観の象徴
一神教が世界の主な宗教で広く信仰される中、日本の神道は数多くの神々を認める多神教的な世界観を持ちます。「八百万の神」は、この日本独特の宗教観や自然観を象徴する言葉として、現代でも幅広く使われています。
読み方・表記
「八百万の神」の読み方は「やおよろずのかみ」です。
「八百万」単独では「やおよろず」と読みます。同じ漢字を「はっぴゃくまん」と読むと具体的な数字を指すことになるため、神道の文脈では必ず「やおよろず」と読みます。
表記は「八百万の神」のほか、「八百万神」(助詞の「の」を省略)と書かれることもあります。古典の原文では後者が多く見られます。
使い方と例文
- 日本には古くから八百万の神が宿るという考え方がある。
- 旧暦10月には全国の八百万の神が出雲に集まるとされ、出雲地方では「神在月」と呼ばれる。
- 自然を大切にする日本人の心は、八百万の神という信仰に根ざしているのかもしれない。
- 『古事記』の天の岩戸の場面では、八百万の神が天の安の河原に集まって相談したと記されている。
古代の日本では「八(や)」という数字が「とても多い」ことを表す言葉として使われていました。八百屋(やおや)、八重桜(やえざくら)、八咫鏡(やたのかがみ)なども同じ発想で、実際の数ではなく「数が多い」ことを示しています。
語源・由来
「八百万の神」という表現は、日本最古の歴史書である『古事記』(712年成立)の上巻・天の岩戸の段が初出とされています。天照大御神が岩戸に隠れて世界から光が失われた際、「八百万神、天の安の河原に神集ひ集ひて」(八百万の神々が天の安の河原に集まって)神々が相談したという記述があります。
古代の日本では、「八」「八十」「八百」「八千」「万」といった数字は、正確な数ではなく「非常に多い」ことを象徴的に表す言葉として使われていました。それを組み合わせた「八百万(やおよろず)」は、とりわけ大きな数・無数であることを強調する表現です。
類似の表現として『日本書紀』や『万葉集』には「八十諸神(やそもろかみたち)」「八十万神(やそよろずのかみ)」「千万神(ちよろずのかみ)」などが見られ、いずれも「数多くの神々」を意味しています。