洒落本
しゃれぼん
目次
  1. 「洒落本」の意味
  2. 読み方・表記
  3. 使い方と例文
  4. 語源・由来
  5. 類語・関連語
  6. よくある質問
かんたんに言うと

「洒落本」は、江戸時代中期から後期にかけて流行した小説の一種で、遊郭を舞台に遊女と客のやり取りを会話中心に描いた作品です。

「洒落本」の意味

「洒落本」とは、江戸時代中期から後期(享保〜文政年間、1716〜1830年頃)にかけて流行した戯作の一種です。主に遊郭を舞台として、遊女と客の駆け引きや、野暮な客の滑稽な振る舞いを、会話を中心とした文章で写実的に描いた小説です。

洒落本の「洒落」とは、遊里社会を中心に発達した「通」という美的生活理念を意味します。「通」とは、遊郭での遊び方に精通し、物事に執着しない洗練された態度のことで、洒落本ではこの「通」に至れない「半可通」や「野暮」な人物の滑稽さが描かれました。

洒落本の特徴

  • 会話中心の文体:登場人物の会話を主体として物語が進む
  • 遊里が舞台:吉原や深川などの遊郭を主な舞台とする
  • 小型の判型:半紙四つ折りの「小本」と呼ばれる文庫本サイズ
  • 「うがち」の手法:遊里社会の内情や知識を暴露する

代表的な作品と作者

  • 『遊子方言』(1770年、多田爺):洒落本の形式を確立した作品
  • 『通言総籬』(1787年、山東京伝):洒落本の傑作
  • 『傾城買四十八手』(1790年、山東京伝)

読み方・表記

「洒落本」の読み方は「しゃれぼん」です。

「洒」は「酒」と似ていますが横棒が一本少ない別の漢字です。「洒落」は「しゃれ」と読み、「おしゃれ」や「だじゃれ」の語源でもあります。

洒落本は別名として以下のようにも呼ばれました。

  • 蒟蒻本(こんにゃくぼん):判型が蒟蒻に似た大きさだったことから
  • 小本(こほん):小型の書型から
  • 通書(つうしょ)・粋書(すいしょ):「通」や「粋」を主題としたことから
  • 茶表紙:茶色の表紙が多かったことから

使い方と例文

「洒落本」を使った例文
  • 江戸時代の洒落本には、当時の遊郭文化が生き生きと描かれている。
  • 山東京伝は洒落本の第一人者として知られる戯作者だ。
  • 寛政の改革で洒落本は風俗壊乱を理由に取り締まりを受けた。
  • 蔦屋重三郎は多くの洒落本を出版し、江戸の出版文化を牽引した。

語源・由来

洒落本の起源は、1720年代後半に漢学の素養を持つ知識人たちが、中国の遊里文学「艶史」を真似て戯れに書いた漢文体の作品にさかのぼります。

1728年刊行の『両巴巵言』が洒落本の始祖とされ、吉原の情景を漢文で記したものでした。その後、会話を中心とした口語体の文体が発達し、1770年の『遊子方言』で現在知られる洒落本の形式が確立されました。

安永・天明期(1772〜1789年)に全盛を迎え、山東京伝らの傑作が生まれましたが、1790年代の寛政の改革で風俗を乱すとして取り締まられ、作者の山東京伝は手鎖50日の刑を、出版元の蔦屋重三郎は財産半分没収の処分を受けました。

その後、洒落本は恋愛を描く「人情本」や、庶民生活の笑いを描く「滑稽本」へと発展していきました。

類語・関連語

よくある質問

Q洒落本の代表的な作者は誰ですか?
A山東京伝が洒落本の第一人者として知られています。『通言総籬』『傾城買四十八手』などの傑作を残しました。ほかに大田南畝(山手馬鹿人)、式亭三馬、十返舎一九なども洒落本を手がけています。
Q洒落本はなぜ衰退したのですか?
A寛政の改革(1787〜1793年)で風俗を乱すとして取り締まりを受けたことが大きな原因です。その後は恋愛を描く人情本や、庶民生活の笑いを描く滑稽本へと発展していきました。
Q「蒟蒻本」と「洒落本」は同じものですか?
A同じものを指します。洒落本は判型が蒟蒻に似た大きさ(半紙四つ折り)だったことから「蒟蒻本」とも呼ばれました。内容から「通書」「粋書」、表紙の色から「茶表紙」とも呼ばれます。
佐藤文哉
この記事の監修者 佐藤文哉 編集長 / ライター歴15年