目次
  1. 「柔道」の意味と使い方
  2. 「柔術」の意味と使い方
  3. 語源・由来
  4. ブラジリアン柔術との関係
  5. 「術」と「道」の違い
  6. よくある質問
結論

一言でまとめると、「柔道」は嘉納治五郎が創始した近代武道で、「柔術」は戦国時代から伝わる実戦的な古武術です。

「柔術」は戦場の組討ちから発展した武術の総称で、江戸時代に多くの流派が成立しました。明治時代に嘉納治五郎がそれらを研究・再編し、人間教育の手段として体系化したものが「柔道」です。また、現代では「柔術」はブラジリアン柔術(BJJ)を指す場合も多く、こちらは柔道から派生して寝技中心に独自の発展を遂げた格闘技です。

柔道

じゅうどう
近代に体系化された武道
嘉納治五郎が1882年に創始

柔術

じゅうじゅつ
戦場で生まれた実戦武術
多数の流派が伝わる古武術
項目 柔道 柔術
基本的な意味 柔術を基に体系化された近代武道・スポーツ 戦国時代から伝わる実戦的な格闘術の総称
成立時期 1882年(明治15年) 戦国〜江戸時代
創始者・流派 嘉納治五郎(講道館柔道) 多数の流派(天神真楊流、起倒流、竹内流など)
目的 心身の鍛錬・人間教育・競技 戦場・護身における実戦的な戦闘技術
主な技術 投げ技・固め技が中心 投げ技・関節技・絞め技・当身技など幅広い
使用例 柔道の試合、柔道部、オリンピック柔道 古流柔術、ブラジリアン柔術、柔術の型

「柔道」の意味と使い方

「柔道」は、明治時代に嘉納治五郎が古流柔術を研究・再編して創始した武道です。1882年(明治15年)に東京の永昌寺に講道館を開いたのが始まりとされています。

嘉納は少年時代から身体が弱く、強くなりたいという思いから天神真楊流や起倒流といった柔術の流派を学びました。そこで得た技術に独自の創意工夫を加え、「柔よく剛を制す」の原理を「心身の力を最も有効に使用する」という原理へと発展させました。これが柔道の根本原理である「精力善用」です。

柔道は単なる格闘技ではなく、「精力善用」「自他共栄」を基本理念とし、技の修練を通じて人格の完成を目指す教育体系として位置づけられています。1964年の東京オリンピックで正式種目に採用され、現在では約204の国と地域が国際柔道連盟に加盟する世界的なスポーツとなっています。

「柔道」を使った例文
  • 彼は中学から柔道を始め、黒帯を取得した。
  • オリンピックの柔道で日本代表が金メダルを獲得した。
  • 柔道は礼に始まり礼に終わるといわれる。

「柔術」の意味と使い方

「柔術」は、武器を持たない状態や短い武器のみで相手を制する日本古来の武術の総称です。12世紀以降の武家社会で芽生え、戦国時代が終わって江戸時代に入ると、実戦から離れた体系的な武術として多くの流派が成立しました。

柔術には投げ技、関節技、絞め技、当身技(打撃技)など幅広い技術が含まれており、戦場で刀を失った際の格闘術として発展した経緯があります。代表的な流派には天神真楊流、起倒流、竹内流、楊心流などがあり、それぞれが独自の技法を伝えています。

明治時代以降は講道館柔道の普及に伴い多くの古流柔術が衰退しましたが、現在も一部の流派は古武道として継承されています。また、現代では「柔術」といえばブラジリアン柔術(BJJ)を指すことも多くなっています。

「柔術」を使った例文
  • 江戸時代には数百もの柔術の流派が存在した。
  • 最近柔術を始めたが、寝技の奥深さに驚いている。
  • 嘉納治五郎は柔術の諸流派を研究して柔道を創始した。

語源・由来

「柔術」の「柔」は、中国の兵法書に由来する「柔よく剛を制す」という原理を表しています。力で真っ向から対抗するのではなく、相手の力を利用して制するという考え方です。「術」は実戦で使うための技術・技法を意味し、戦場での生き残りに直結する実用的な性格を持っていました。

一方「柔道」の「道」には、技術の修練を通じて人間としての道を究めるという思想が込められています。嘉納治五郎は「道は根本で術はその応用」と述べ、単に相手に勝つための技術ではなく、人間形成の手段として柔術を再定義しました。嘉納はその教育の場を「講道館」と名付けましたが、「講道」には道を学び、実践するという意味があります。

なお「柔道」という言葉自体は嘉納の造語ではなく、江戸時代の一部の流派(直信流や起倒流など)でもすでに使われていました。しかし、嘉納が理念も含めて体系化し直したことで、「柔道」は講道館柔道を指す言葉として定着しました。

ブラジリアン柔術との関係

「柔術」の話題で欠かせないのがブラジリアン柔術(BJJ)です。現代において「柔術をやっている」と言えば、古流柔術ではなくブラジリアン柔術を指すことが多くなりました。

前田光世とグレイシー家

ブラジリアン柔術は、講道館柔道の猛者として知られる前田光世(通称コンデ・コマ)がブラジルに渡ったことに端を発します。前田は1915年頃にブラジルのベレンに定住し、地元の有力者ガスタオン・グレイシーの長男カーロス・グレイシーに格闘技術を教えました。

前田が教えた技術は、当時のスポーツ化される前の柔道・柔術の実戦的な技法で、当身技や関節技を組み合わせた実践的なものでした。カーロスはやがて弟たちにもこの技術を伝え、中でも小柄で喘息持ちだった末弟のエリオ・グレイシーは、体格で劣る者でも戦えるよう寝技・関節技を中心に技術を発展させました。これが「グレイシー柔術」の原型です。

世界的な格闘技へ

1993年、アメリカで開催された究極の格闘技イベント「UFC」の第1回大会で、エリオの六男ホイス・グレイシーが自分よりはるかに大きい対戦相手を次々と倒して優勝しました。この衝撃的な活躍により「グレイシー柔術」は世界中に知られるようになり、その後「ブラジリアン柔術」として競技化が進みました。

つまり、日本の柔術から柔道が生まれ、柔道がブラジルに渡ってブラジリアン柔術になったという壮大な歴史のつながりがあります。「柔術→柔道→ブラジリアン柔術」という流れを押さえておくと、それぞれの違いがより深く理解できるでしょう。

「術」と「道」の違い

「柔術」と「柔道」の違いを理解するうえで重要なのが、「術」と「道」という考え方の違いです。この対比は柔道・柔術に限らず、日本の武術全般に共通するテーマです。

項目 術(じゅつ) 道(どう)
意味 実戦で使うための技術・技法 技術を通じた人間形成・精神修養
目的 相手に勝つこと、身を守ること 心身の鍛錬と人格の完成
柔術、剣術、槍術 柔道、剣道、合気道

「術」は戦いに勝つための実用技術であるのに対し、「道」は技術の修練を手段として、人としてのあり方を追求するものです。嘉納治五郎が柔術を柔道と改めた背景には、勝敗だけを追い求めるのではなく、修行を通じて社会に貢献できる人間を育てるという教育思想がありました。

よくある質問

Q
「柔道」と「柔術」はどちらが先にできた?
A
柔術の方が歴史が古く、戦国時代から江戸時代にかけて成立しました。柔道はその柔術を基に、嘉納治五郎が1882年(明治15年)に創始した近代武道です。
Q
ブラジリアン柔術と日本の古流柔術は同じもの?
A
同じ「柔術」という名前ですが、別のものです。ブラジリアン柔術は講道館柔道の技術がブラジルに伝わり、寝技・関節技を中心に独自発展した格闘技です。古流柔術は日本の伝統武術で、投げ技や当身技など幅広い技法を含みます。
Q
「柔術」と「jiu-jitsu」の表記は同じ意味?
A
「jiu-jitsu」は柔術のローマ字表記で、海外ではおもにブラジリアン柔術を指します。日本の古流柔術は英語で「jujutsu」と表記して区別されることもあります。
Q
柔道の試合と柔術の試合では何が違う?
A
柔道は投げ技による「一本」で試合が終わるのが大きな特徴です。一方、ブラジリアン柔術の試合では投げ技はポイント制で、寝技に移行して関節技や絞め技で「一本(タップアウト)」を狙う展開が中心です。
佐藤文哉
この記事の監修者 佐藤文哉 編集長 / ライター歴15年