「格闘技」はルールに基づいて勝敗を競う戦闘系の競技・スポーツ全般を指します。「武道」は日本の伝統的な武術を基盤に、心身の鍛錬と人格形成を目的として近代以降に発展した文化です。「武術」は戦場や実戦を想定した戦闘技術そのもので、古くから伝わる実用的な技の体系を指します。簡単に言えば、格闘技は「競技」、武道は「人間修行の道」、武術は「実戦の技」です。
| 項目 | 格闘技 | 武道 | 武術 |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 試合での勝利 | 心身の鍛錬・人格形成 | 実戦での生存・制圧 |
| 性質 | スポーツ・競技 | 修行の道・伝統文化 | 戦闘技術の体系 |
| 発祥 | 世界各地 | 日本(明治以降に確立) | 日本を含む各地(古代〜) |
| 試合・競技 | あり(重視) | あり(手段の一つ) | 原則なし(形稽古中心) |
| 精神性 | スポーツマンシップ | 礼節・道徳・人間形成 | 生死に向き合う覚悟 |
| 代表例 | ボクシング、レスリング、MMA | 柔道、剣道、空手道、合気道 | 剣術、柔術、槍術、弓術 |
「格闘技」の意味と使い方
「格闘技」は、自分の体を使った攻撃や防御の技術を、明確なルールのもとで競い合うスポーツや競技の総称です。英語では「Combat Sports」や「Martial Arts」に相当します。
格闘技の最大の特徴は競技性です。ルールが明文化されており、審判がいて、勝敗を競うことが前提になっています。試合で勝つことが最も重要な目標であり、そのために技術・体力・戦略を磨きます。
格闘技は日本発祥のものに限りません。ボクシングやレスリングのように海外で生まれた競技も含まれます。また、近年人気の総合格闘技(MMA)のように、打撃・組み技・寝技を総合的に行う競技もあります。
格闘技の主な分類
- 打撃系:ボクシング、キックボクシング、ムエタイなど。パンチやキックで戦う
- 組み技系:レスリング、ブラジリアン柔術など。投げや関節技で戦う
- 総合系:MMA(総合格闘技)など。打撃・投げ・寝技を組み合わせる
- 子どもに何か格闘技を習わせたいと考えている。
- 彼は学生時代からさまざまな格闘技の試合に出場してきた。
- 最近は女性にも格闘技ジムに通う人が増えている。
- 格闘技イベントのチケットが即日完売した。
「武道」の意味と使い方
「武道」は、日本古来の武術(古武道)を基盤とし、近代以降に心身の鍛錬と人格形成を目的として体系化された日本の伝統文化です。
日本武道協議会の「武道憲章」では、武道の目的を「武技による心身の鍛錬を通じて人格を磨き、識見を高め、有為の人物を育成すること」と定めています。つまり、試合に勝つことよりも、稽古を通じて人間として成長することが重視されるのです。
現在、日本武道協議会に加盟しているのは柔道・剣道・弓道・相撲・空手道・合気道・少林寺拳法・なぎなた・銃剣道の9種目です。これらはいずれも日本で体系化されたもので、段級制や形稽古など、格闘技にはない独自の文化を持っています。
武道では「礼に始まり礼に終わる」という言葉に象徴されるように、技の強さだけでなく、礼節や精神性が重んじられます。剣道でガッツポーズをすると一本が取り消されることがあるのも、この精神の表れです。
- 中学校の体育で武道が必修科目になっている。
- 武道を通じて礼儀作法を学んだ。
- 日本の武道は世界中に愛好者がいる。
- 彼女は武道の精神を仕事にも生かしている。
「武術」の意味と使い方
「武術」は、戦場や実戦を想定した戦闘技術の体系を指す言葉です。日本では古武術・古武道とも呼ばれ、明治維新以前に成立した剣術・柔術・槍術・弓術などの流派がこれにあたります。
武術の最大の特徴は実戦性です。もともとは合戦や決闘で生き残るための技術であり、相手を殺傷・制圧することを前提に発展しました。そのため、武術には武道から除かれた危険な技法(目潰し、急所攻撃、隠し武器の使用など)が含まれる流派もあります。
武術は原則として試合を行いません。定められた「形」を繰り返し稽古することが中心で、秘伝や奥義として技が秘匿されることもありました。江戸時代には剣術だけでも数百の流派が存在したとされ、現在も100ほどの流派が伝承されています。
なお、「武術」は日本に限らず使われる言葉で、「中国武術(カンフー)」や「マーシャルアーツ」のように広い意味で用いられることもあります。
- この流派の武術は江戸時代から一子相伝で受け継がれている。
- 古い武術の形には、実戦で命を守るための知恵が詰まっている。
- 中国武術を題材にした映画が世界的にヒットした。
語源・由来
「格闘技」の「格闘」は「つかみ合い、組み合って戦うこと」を意味し、「技」は「わざ・技術」を指します。つまり、体を使って戦う技術・競技という意味合いです。日本語としての成り立ちは比較的新しく、近代スポーツの普及とともに定着した言葉です。
「武道」の「武」は「戦い・軍事」、「道」は「人として歩むべき道筋・道理」を意味します。もともと「武道」という言葉は「武士道」と同義で使われていましたが、明治末期から大正時代にかけて、古武術を近代的に再編した体系を指す言葉として使われるようになりました。大日本武徳会の西久保弘道が「武術」から「武道」への名称変更を主唱し、武術専門学校を武道専門学校に改称したことがきっかけとされています。
「武術」の「術」は「わざ・技術・方法」を意味します。「武」+「術」で、戦うための技術そのものを指す言葉です。武道が精神性を重視する「道」であるのに対し、武術はあくまで実践的な「技」の体系であることが、この一文字の違いに表れています。
「術」から「道」へ ― 3つの関係性
格闘技・武道・武術の3つは、完全に独立した概念ではなく、歴史的に深くつながっています。
まず、日本の武の歴史は「武術 → 武道 → 格闘技」という大きな流れで発展してきました。室町時代以降に体系化された実戦的な武術(古武道)が、明治以降に精神修養の要素を加えて武道へと発展し、さらにルールを整備してスポーツ化されたものが格闘技として広まったという流れです。
たとえば、古来の柔術(武術)から嘉納治五郎が柔道(武道)を創設し、柔道がオリンピック競技として格闘技の側面を持つようになった――という変遷はその典型例です。
ただし、すべてが一方向に変化したわけではありません。ボクシングやレスリングのように、日本の武術とは無関係に海外で発展した格闘技も多くあります。また、現在も古流の武術を実戦技術として伝承している流派もあり、3つは重なり合いながら共存しています。
境界線が曖昧なケース
実際には、格闘技・武道・武術の境界線は必ずしも明確ではなく、一つの競技が複数の性質を持つことも珍しくありません。
空手は「武道」?「格闘技」?
空手は日本武道協議会に加盟する武道(空手道)である一方、フルコンタクト空手のように勝敗を重視する競技スタイルもあり、格闘技としての側面も持っています。また、沖縄の伝統的な空手は武術に近い性質を持ちます。
柔道のスポーツ化
柔道はもともと武道として創設されましたが、オリンピック種目になったことで競技性が強まり、「柔道はスポーツか武道か」という議論が長く続いています。武道憲章でも「単なる技術の修練や勝敗の結果にのみおぼれず」と戒めており、武道としての本質を失わないことが求められています。
テコンドーやカポエイラは?
テコンドー(韓国)やカポエイラ(ブラジル)は、それぞれの国で発展した武技ですが、日本の「武道」には含まれません。日本で体系化されたものでないためです。これらは広い意味での「格闘技」や「マーシャルアーツ」に分類されます。
よくある質問
「格闘技」と「武道」はどちらが強い?
どちらが強いかは一概に言えません。格闘技はルールの中で勝つことに特化しており、武道は人間形成が主目的です。目的と性質が異なるため、単純な強さの比較は適切ではありません。
柔道は「格闘技」と「武道」のどちらに分類される?
柔道は日本武道協議会に加盟する「武道」ですが、オリンピック種目でもあるため、格闘技としての側面も持っています。武道としての精神性と、競技としての勝敗の両方を併せ持つ存在です。
ボクシングは「武道」に含まれる?
含まれません。武道は日本で体系化されたものを指すため、海外発祥のボクシングは格闘技に分類されます。同様に、レスリングやフェンシングも武道ではなく格闘技です。
「武術」と「武芸」は同じ意味?
ほぼ同義として使われることが多いです。ただし「武芸」は「武芸十八般」のように、武士が身につけるべき技芸全般を指すニュアンスがあり、「武術」よりもやや文化的・教養的な響きを持ちます。