目次
  1. 「被害届」の意味と使い方
  2. 「告訴」の意味と使い方
  3. 「告発」の意味と使い方
  4. 語源・由来
  5. 使い分けのポイント
  6. よくある質問
結論

「被害届」は被害者が犯罪被害の事実を届け出るもので、処罰を求める意思は含まれません。「告訴」は被害者などの告訴権者が犯人の処罰を求める意思表示です。「告発」は被害者以外の第三者が犯人の処罰を求める意思表示です。告訴・告発には捜査義務が生じますが、被害届だけでは捜査が行われないこともあります。

被害届

ひがいとどけ
被害事実の届出
処罰を求める意思は含まない

告訴

こくそ
被害者等による処罰要求
親告罪の起訴に必要

告発

こくはつ
第三者による処罰要求
誰でも行える
項目 被害届 告訴 告発
届出できる人 被害者本人 被害者・法定代理人など 誰でも(犯人以外)
処罰を求める意思 含まない 含む 含む
捜査義務 生じない 生じる 生じる
送致義務 生じない 生じる 生じる
親告罪の起訴 不可 可能 不可
法的根拠 犯罪捜査規範61条 刑事訴訟法230条 刑事訴訟法239条

「被害届」の意味と使い方

「被害届」は、犯罪の被害者が警察などの捜査機関に対して、被害に遭った事実を届け出る書類です。あくまで被害の事実を申告するものであり、犯人の処罰を求める意思表示は含まれていません。

被害届の特徴

被害届は捜査のきっかけ(捜査の端緒)となりますが、届出によって捜査機関に捜査義務が生じるわけではありません。捜査を開始するかどうかは捜査機関の判断に委ねられます。

そのため、証拠が乏しい事件や軽微な犯罪の場合、被害届を出しても実際には捜査が行われないこともあります。

「被害届」を使った例文
  • 自転車を盗まれたので、交番に被害届を出した。
  • 警察から「被害届を取り下げてほしい」と言われた。
  • 被害届が受理されたが、その後の進展はなかった。

「告訴」の意味と使い方

「告訴」は、犯罪の被害者やその法定代理人など、法律で定められた告訴権者が、捜査機関に対して犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示です。刑事訴訟法230条に規定されています。

告訴の特徴

告訴には「犯人を処罰してほしい」という被害者の意思が明確に含まれています。そのため、告訴を受理した捜査機関には捜査義務が生じ、事件を検察官に送致する義務も発生します。

また、検察官は起訴・不起訴の処分結果を告訴人に通知する義務があります。

告訴権者とは

告訴できるのは以下の人に限られます。

  • 犯罪の被害者本人
  • 被害者の法定代理人(親権者・後見人)
  • 被害者が死亡した場合は配偶者・直系親族・兄弟姉妹

親告罪との関係

名誉毀損罪、器物損壊罪、親族間の窃盗罪などの「親告罪」は、告訴がなければ検察官が起訴することができません。親告罪では告訴が起訴の要件となります。

「告訴」を使った例文
  • 名誉毀損で相手を告訴することを検討している。
  • 弁護士に依頼して告訴状を作成してもらった。
  • 示談が成立したので、告訴を取り下げた。

「告発」の意味と使い方

「告発」は、被害者や告訴権者以外の第三者が、捜査機関に対して犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示です。刑事訴訟法239条1項に規定されており、犯人以外であれば誰でも行うことができます。

告発の特徴

告発も告訴と同様に、捜査機関に捜査義務と送致義務が生じます。ただし、親告罪においては告発があっても起訴することはできず、被害者による告訴が必要です。

告発が使われる場面

告発は、被害者が特定されにくい犯罪や、社会的影響の大きい犯罪に対して行われることが多いです。

  • 脱税や補助金の不正受給
  • 公務員の職権乱用や汚職
  • 選挙違反
  • 環境犯罪や公害

「内部告発」との違い

マスコミなどで使われる「内部告発」は、組織の不正を内部の人間が外部に明かすことを指し、刑事訴訟法上の「告発」とは法的に異なるものです。

「告発」を使った例文
  • 市民団体が政治家を公職選挙法違反で告発した。
  • 国税庁が脱税容疑で経営者を告発した。
  • 内部関係者の告発により、不正が明るみに出た。

語源・由来

「被害届」の成り立ち

「被害」は損害を受けること、「届」は届け出ることを意味します。犯罪によって損害を受けた事実を届け出る書類という意味で「被害届」と呼ばれます。

「告訴」の成り立ち

「告」は告げる・申し出る、「訴」は訴える・うったえるを意味します。被害者が自ら訴え出るという意味で「告訴」と呼ばれます。

「告発」の成り立ち

「告」は告げる・申し出る、「発」は明らかにする・暴くを意味します。犯罪事実を明らかにして申告するという意味で「告発」と呼ばれます。

使い分けのポイント

主体による違い

誰が行うかで使い分けが決まります。

  • 被害者本人が被害を届け出る → 被害届
  • 被害者が処罰を求める → 告訴
  • 第三者が処罰を求める → 告発

処罰意思による違い

処罰を求めるかどうかで使い分けます。

  • 被害事実の申告のみ → 被害届
  • 処罰を求める意思あり → 告訴・告発

よくある質問

Q
「告訴」と「告発」の読み方の違いは?
A
「告訴」は「こくそ」、「告発」は「こくはつ」と読みます。どちらも「告」は「コク」と読みますが、「訴」は「ソ」、「発」は「ハツ」と読みます。
Q
「刑事告訴」と「告訴」は同じ意味?
A
同じ意味です。民事訴訟と区別するために「刑事告訴」と呼ぶことがあります。同様に「刑事告発」という表現も使われます。
Q
「告発」と「内部告発」は同じ意味?
A
異なります。刑事訴訟法上の「告発」は捜査機関に対する処罰要求ですが、「内部告発」は組織の不正を外部に明かすことを指す一般的な言葉で、法的に異なる概念です。
Q
「親告罪」とはどういう意味?
A
被害者による告訴がなければ起訴できない犯罪のことです。名誉毀損罪、器物損壊罪、侮辱罪などが該当します。「親(みずか)ら告(つ)げる」ことが起訴の要件となる罪という意味です。
佐藤文哉
この記事の監修者 佐藤文哉 編集長 / ライター歴15年