「頂く」と「戴く」はどちらも「もらう」「食べる」の謙譲語ですが、「頂く」は一般的な場面で広く使え、「戴く」はより格式高い場面で使います。ビジネス文書や公用文では「頂く」を使うのが基本です。「戴」の「いただく」という読みは常用漢字表の表外読みのため、公的な文書では使用できません。なお、「~していただく」のように補助動詞として使う場合は、ひらがなで「いただく」と書くのがルールです。
| 項目 | 頂く | 戴く |
|---|---|---|
| 基本的な意味 | もらう・食べる・飲むの謙譲語 | もらう・食べる・飲むの謙譲語 |
| 常用漢字の読み | (表内読み) | (表外読み) |
| 敬意の度合い | 通常の謙譲表現 | より深い敬意を表す |
| 使用場面 | 一般的・ビジネス全般 | 格式高い・改まった場面 |
| 公用文・ビジネス文書 | ||
| 関連熟語 | 頂上、頂点、頂戴 | 戴冠、推戴、奉戴 |
「頂く」の意味と使い方
「頂く」は「もらう」「食べる」「飲む」の謙譲語として使う動詞です。「頂」は常用漢字で、「いただく」という読みも常用漢字表に含まれているため、ビジネス文書や公用文でも問題なく使用できます。
「もらう」の謙譲語として
目上の人から物や好意を受け取るときに使います。「お土産を頂く」「ご意見を頂く」「お時間を頂く」のように、自分がへりくだることで相手への敬意を表します。
「食べる」「飲む」の謙譲語として
食事の場面で使う謙譲語です。「お食事を頂く」「お茶を頂く」のように、飲食することを丁寧に表現できます。食事前の「いただきます」も同じ由来ですが、挨拶としてはひらがなで書くのが一般的です。
- 先日は貴重なお時間を頂き、ありがとうございました。
- お客様からお褒めの言葉を頂いた。
- 地元の名産品をおいしく頂きました。
- 社長から直接ご指導を頂く機会に恵まれた。
「戴く」の意味と使い方
「戴く」も「もらう」「食べる」「飲む」の謙譲語ですが、「頂く」よりも格式高く、改まった印象を与える表現です。「戴」は常用漢字ですが、「いただく」という読みは表外読みのため、公用文やビジネス文書では使用を避けるのが無難です。
より深い敬意を表したいとき
「戴く」には「頭の上に恭しくのせる」という原義があり、非常に高い敬意を込めて何かを受け取るニュアンスがあります。目上の方からの特別な贈り物や、格式高い品物を受け取る場面で使われます。
格式高い文章や私的な手紙で
公用文やビジネス文書では「頂く」を使いますが、格式を重んじる場面や、目上の方への私的な手紙などでは「戴く」を使うことで、より深い感謝や敬意を表現できます。
- 会長から身に余るお言葉を戴き、恐縮しております。
- 皇室から賜った品を謹んで戴いた。
- 恩師から直筆のお手紙を戴くという光栄に浴した。
語源・由来
「頂」の成り立ち
「頂」は形声文字で、意味を表す「頁(おおがい)」と音を表す「丁」から成り立っています。「頁」は頭を表す部首で、「丁」は釘の平らな頭の部分を表します。「頭のてっぺん」「いただき」を意味し、そこから「頭の上にのせる」「ありがたく受け取る」という意味が生まれました。「頂上」「頂点」「山頂」などの熟語でも使われています。
「戴」の成り立ち
「戴」は形声文字で、「異」と音符から成り立っています。「異」は大きな面を頭にのせる様子を表し、「頭の上に物をのせる」「うやうやしく受け取る」という意味を持ちます。古代中国では、冠を頭にのせることが尊敬や権威の象徴であったことから、敬意を込めて受け取るという意味が生まれました。「戴冠」「推戴」「奉戴」などの熟語で使われています。
「頂戴」の由来
「頂戴(ちょうだい)」は仏教用語に由来します。身分の高い人から物を受け取ったとき、感謝の気持ちを込めて頭の上に高くささげる動作を表しており、「頂」と「戴」の両方の漢字が使われています。
漢字とひらがなの使い分け
「いただく」は漢字で書く場合と、ひらがなで書く場合とで使い分けが必要です。この使い分けは文化庁の「公用文作成の考え方」でも示されています。
漢字「頂く」を使う場合
動詞として「もらう」「食べる」「飲む」の謙譲語を表すときは、漢字の「頂く」を使います。
- お土産を頂いた(もらった)
- お食事を頂く(食べる)
- お茶を頂きます(飲む)
ひらがな「いただく」を使う場合
補助動詞として「~してもらう」の意味で使うときは、ひらがなの「いただく」を使います。
- ご確認いただけますでしょうか
- お越しいただきありがとうございます
- ご連絡いただければ幸いです
よくある間違い
- ご確認頂けますでしょうか → 補助動詞なのでひらがなが正しい
- お越し頂きありがとうございます → 補助動詞なのでひらがなが正しい
判断に迷ったときは、「もらう」「食べる」「飲む」に置き換えられるかどうかを考えてみましょう。置き換えられるなら漢字の「頂く」、置き換えると意味がおかしくなるなら補助動詞なのでひらがなの「いただく」を使います。
ビジネスでの使い分け
ビジネス文書では「頂く」を使う
ビジネスメールや公式文書では「頂く」を使うのが基本です。「戴」の「いただく」という読みは常用漢字表の表外読みのため、公用文やそれに準じるビジネス文書では使用できません。
迷ったらひらがなで
漢字とひらがなの使い分けに自信がないときは、ひらがなで「いただく」と書くのが無難です。ひらがなで書いても失礼にはなりませんし、間違いを避けられます。
「いただく」の多用に注意
ビジネスメールでは「いただく」を多用しがちですが、一文に何度も出てくると読みにくくなります。「ご確認のほどお願いいたします」「ご検討くださいますようお願い申し上げます」など、別の表現に言い換えることも検討しましょう。
よくある質問
ビジネスメールでは「頂く」と「戴く」どちらを使う?
ビジネスメールでは「頂く」を使います。「戴」の「いただく」という読みは常用漢字表の表外読みのため、ビジネス文書では使用を避けるのが適切です。
「ご確認頂けますか」と「ご確認いただけますか」どちらが正しい?
「ご確認いただけますか」とひらがなで書くのが正しいです。この場合の「いただく」は補助動詞(~してもらう)として使われているため、ひらがなで表記します。
食事前の「いただきます」は漢字で書く?
食事前の挨拶としての「いただきます」は、ひらがなで書くのが一般的です。「食べる」の謙譲語として使っているので漢字で書いても間違いではありませんが、挨拶として定着した表現はひらがなで書く慣例があります。
「頂戴」と「頂く」の違いは?
「頂戴」は「もらう」「食べる」の謙譲語で、「頂く」とほぼ同じ意味です。「頂戴する」「頂戴いたします」のように使います。また、「お名前を頂戴できますか」のように相手に何かを求める場面でも使われます。