目次
  1. 「押さえる」の意味と使い方
  2. 「抑える」の意味と使い方
  3. 語源・由来
  4. 送りがなの違いに注意
  5. 迷いやすい表現の使い分け
  6. 使い分けの判断基準
  7. よくある質問
結論

「押さえる」は物理的に力を加えて動かないようにする、確保する、把握するという意味で使います。「抑える」は勢いを止める、ある限度を超えないようにする、感情をこらえるという意味で使います。「要点をおさえる」「予約をおさえる」は「押さえる」が正しく、「怒りをおさえる」「費用をおさえる」は「抑える」を使います。送りがなも異なり、「押さえる」は「さ」が入りますが、「抑える」は入りません。

押さえる

おさえる
物理的に力を加える・確保する
把握する・理解する

抑える

おさえる
勢いを止める・限度内に収める
感情をこらえる
項目 押さえる 抑える
基本的な意味 動かないようにする、確保する 勢いを止める、限度内に収める
送りがな える(「さ」あり) 抑える(「さ」なし)
常用漢字
主な使用例 紙を押さえる、予約を押さえる、要点を押さえる 怒りを抑える、費用を抑える、物価上昇を抑える
関連熟語 押印、押収、差押え 抑制、抑止、抑圧

「押さえる」の意味と使い方

「押さえる」は、物理的に力を加えて物を固定したり、対象を確保・把握したりするときに使います。「押」という漢字は「手で上から覆いかぶさるようにして押しつける」という意味を持ち、「押印」「押収」などの熟語でも使われています。

物理的に力を加えて動かないようにする

紙や物が動かないように手や道具で固定する場合に使います。「傷口を押さえる」「帽子を押さえる」のように、物理的な動作を表します。

確保する・手に入れる

予約や物件、チケットなど、必要なものを確保するときに使います。「会議室を押さえる」「人気店を押さえる」のように、自分のものとして確保するニュアンスがあります。

把握する・理解する

大切なところをしっかり理解する、要点をつかむという意味で使います。「ポイントを押さえる」「基本を押さえる」のように、知識として自分のものにするニュアンスです。

「押さえる」を使った例文
  • 風で飛ばないように紙を手で押さえた
  • 来週の会議室を押さえておいてください。
  • 試験に出るポイントを押さえて勉強する。
  • 犯人の証拠を押さえる

「抑える」の意味と使い方

「抑える」は、勢いのあるものを止めたり、ある限度を超えないようにしたり、感情をこらえたりするときに使います。「抑」という漢字は「上からおさえつけてとめる」という意味を持ち、「抑制」「抑止」「抑圧」などの熟語でも使われています。

勢いを止める・食い止める

増えようとするもの、広がろうとするものを食い止める場合に使います。「反撃を抑える」「病気の流行を抑える」のように、マイナスの事態を防ぐニュアンスがあります。

ある限度を超えないようにする

数量や金額などが一定の水準を超えないようにするときに使います。「出費を抑える」「カロリーを抑える」のように、量を低く保つニュアンスです。

感情をこらえる

怒りや涙など、込み上げてくる感情を表に出さないようにするときに使います。「怒りを抑える」「涙を抑える」のように、内側から湧き上がるものを押しとどめるニュアンスです。

「抑える」を使った例文
  • 怒りを抑えて冷静に対応した。
  • 今月は出費を抑えるように心がけている。
  • 投手は相手打線を3点に抑えた
  • インフレを抑えるための政策が発表された。

語源・由来

「押」の成り立ち

「押」は形声文字で、意味を表す「手(扌)」と音を表す「甲」から成り立っています。「甲」には「覆いかぶさる」という意味があり、「物の上に覆いかぶさるようにして手を置き、押しつける」という動作を表します。この「押」を使った熟語には「押印」「押収」「押送」などがあります。

「抑」の成り立ち

「抑」は会意文字で、「手」と「卬」から成り立っています。「卬」は人を上から手でおさえる形を表し、「手でおさえつけてとめる」という意味を持ちます。興味深いことに、「抑」と「仰」は対の関係にあり、「抑」が上からおさえる側、「仰」が下から見上げる側を表します。「抑揚」という熟語はこの対比から生まれた言葉です。

送りがなの違いに注意

「押さえる」と「抑える」は送りがなが異なります。

  • 押さえる:「押」+「さえる」(「さ」が入る)
  • 抑える:「抑」+「える」(「さ」が入らない)

パソコンやスマートフォンで変換するときは、この送りがなの違いで正しい漢字を選びやすくなります。「おさえる」と入力して変換するとき、どちらの意味で使いたいかを意識しておくと間違いを防げます。

迷いやすい表現の使い分け

「要点をおさえる」はどっち?

「要点を押さえる」が正解です。大切なところを把握する・理解するという意味なので「押さえる」を使います。「ポイントを押さえる」「コツを押さえる」も同様です。

「予約をおさえる」はどっち?

「予約を押さえる」が正解です。必要なものを確保するという意味なので「押さえる」を使います。「チケットを押さえる」「物件を押さえる」も同様です。

「費用をおさえる」はどっち?

「費用を抑える」が正解です。金額を一定の水準を超えないようにするという意味なので「抑える」を使います。「出費を抑える」「価格を抑える」も同様です。

「敵をおさえる」はどっち?

状況によって異なります。物理的に取り押さえる場合は「敵を押さえる」、敵の勢いを食い止める場合は「敵を抑える」を使います。「敵の侵入を抑える」「暴れる敵を押さえる」のように、文脈で使い分けます。

使い分けの判断基準

  • 物理的に固定する → 「押さえる」
  • 確保する・手に入れる → 「押さえる」
  • 把握する・理解する → 「押さえる」
  • 勢いを止める・食い止める → 「抑える」
  • 限度を超えないようにする → 「抑える」
  • 感情をこらえる → 「抑える」

判断に迷ったときは、「抑制」「抑止」に置き換えられるかどうかを考えてみましょう。置き換えられるなら「抑える」、そうでなければ「押さえる」を使うと間違いが減ります。

よくある質問

Q
「ポイントをおさえる」は「押さえる」と「抑える」どちらが正しい?
A
「ポイントを押さえる」が正しい表現です。大切なところを把握する・理解するという意味なので「押さえる」を使います。「抑える」は勢いを止める・量を減らすという意味なので、この文脈には合いません。
Q
「怒りを押さえる」と書くのは間違い?
A
一般的には「怒りを抑える」が適切です。込み上げる感情を押しとどめるという意味では「抑える」を使います。ただし、辞書によっては両方の表記を認めているものもあり、完全な誤りとは言い切れません。
Q
「おさえる」には他にも漢字がある?
A
「圧さえる」という表記もあります。上から圧力を加えて動かないようにするという意味ですが、常用漢字表にこの読みは含まれておらず、現代ではあまり使われません。一般的には「押さえる」「抑える」の2つを使い分けます。
Q
野球の「抑え投手」はなぜ「抑」を使う?
A
試合終盤で相手の攻撃を食い止める役割を担うことから「抑え投手」と書きます。「相手打線を抑える」のように、勢いを止める・点数を最小限に抑えるという意味で「抑」が使われています。
佐藤文哉
この記事の監修者 佐藤文哉 編集長 / ライター歴15年