「突く」は尖ったもので刺す、棒状のもので押すなど物理的な動作を表します。「衝く」は弱点や急所を攻める、感覚を刺激するなど抽象的・比喩的な場面で使います。「撞く」は鐘を打ち鳴らすときに使う表記です。ただし「衝く」「撞く」は常用漢字の訓読みではないため、迷ったら「突く」か、ひらがなで「つく」と書けば問題ありません。
| 項目 | 突く | 衝く | 撞く |
|---|---|---|---|
| 基本的な意味 | 尖ったもので刺す、棒で押す | 弱点を攻める、感覚を刺激する | 鐘を打ち鳴らす |
| 対象 | 物理的なもの | 抽象的なもの | 鐘・梵鐘 |
| 常用漢字 | 表外読み | 人名用漢字 | |
| 使用例 | 槍で突く、杖を突く | 虚を衝く、鼻を衝く | 鐘を撞く |
「突く」の意味と使い方
「突く」は最も一般的な表記で、物理的に何かを刺したり、棒状のもので押したりする動作を表します。「突撃」「突進」「突破」などの熟語でイメージすると分かりやすいでしょう。
尖ったもので刺す・当てる
「槍で突く」「針で突く」「指で突く」のように、先の尖ったもので対象に力を加える動作を表します。
棒状のもので押す・支える
「杖を突く」「ひざを突く」「判を突く」のように、棒状のものを地面に当てたり、押し当てたりする動作を表します。ビリヤードで「球を突く」もこの用法です。
勢いよくぶつかる
「頭を突く」「肘で突く」のように、体の一部を勢いよく当てる動作も「突く」と書きます。
- 武士が槍で敵を突いた。
- お年寄りが杖を突きながらゆっくり歩いている。
- 書類に判を突いて提出した。
- ビリヤードでキューを使って球を突く。
- 土下座してひざを突いた。
「衝く」の意味と使い方
「衝く」は、弱点や急所を攻める、感覚を強く刺激するなど、抽象的・比喩的な場面で使われます。「衝撃」「衝突」「衝動」などの熟語でイメージすると分かりやすいでしょう。
ただし「衝」の訓読み「つく」は常用漢字表に含まれていないため、新聞や公文書ではひらがなで書かれることが多いです。
弱点・急所を攻める
「虚を衝く」「不意を衝く」「痛いところを衝く」のように、相手の油断や弱点を狙って攻めることを表します。
感覚や心を刺激する
「鼻を衝く」「胸を衝く」のように、嗅覚や感情を強く刺激することを表します。
勢いよく立ち上がる・そびえる
「天を衝く」「雲を衝く」のように、勢いの盛んなさま、非常に高いさまを表す慣用句に使われます。「怒髪天を衝く」は激しい怒りの形相を表します。
- 相手の虚を衝いて一気に攻め込んだ。
- 彼の指摘は痛いところを衝いていた。
- 鼻を衝くような異臭が漂っていた。
- 天を衝くような高層ビルが立ち並ぶ。
- 怒髪天を衝く勢いで抗議した。
「撞く」の意味と使い方
「撞く」は、鐘を打ち鳴らすときに使う表記です。「撞木(しゅもく)」という鐘を打つ棒で、梵鐘などを打ち鳴らすことを指します。
「撞」は人名用漢字で常用漢字ではないため、「鐘を突く」や「鐘をつく」と書かれることもあります。ただし、寺院や仏教関連の文章では「鐘を撞く」と書くのが正式とされています。
- 大晦日に除夜の鐘を撞きに行く。
- 僧侶が撞木で梵鐘を撞いた。
- 知恩院の大鐘は17人がかりで撞く。
語源・由来
「突」という漢字は、「穴」と「犬」から成り、穴から犬が飛び出す様子を表した会意文字です。そこから「勢いよく出る」「先端で押す」という意味が生まれました。
「衝」という漢字は、「行」と「童」から成る形声文字で、もともとは「大通り」を意味しました。そこから「要所」「ぶつかる」という意味が派生し、「勢いよくぶつかる」「攻め入る」という意味で使われるようになりました。「衝撃」「衝突」「要衝」などの熟語に、この意味が残っています。
「撞」という漢字は、「手」と「童」から成る形声文字で、「棒の先で打つ」という意味を表します。鐘を打ち鳴らす道具「撞木(しゅもく)」や、ビリヤードを意味する「撞球(どうきゅう)」などに使われています。
迷ったときの判断基準
「衝く」「撞く」はどちらも常用漢字表の訓読みではないため、一般的な文章では以下のように対応するとよいでしょう。
| 場面 | 推奨表記 | 理由 |
|---|---|---|
| 物理的な動作 | 突く | 常用漢字の訓読み |
| 慣用句(虚を〜、不意を〜) | 衝く or つく | 表外読みのためひらがなも可 |
| 鐘を鳴らす | 撞く or つく | 正式には「撞く」だがひらがなも可 |
| 迷ったとき | 突く or つく | 最も汎用的 |
よくある質問
「除夜の鐘をつく」はどの漢字が正しい?
正式には「鐘を撞く」と書きます。「撞木(しゅもく)」という道具で鐘を打ち鳴らすことを表す漢字です。ただし「撞」は常用漢字ではないため、「鐘を突く」「鐘をつく」と書いても間違いではありません。
「虚をつく」と「虚を突く」どちらが正しい?
本来は「虚を衝く」と書きます。弱点を攻めるという抽象的な意味なので「衝」が適切です。ただし「衝」の「つく」は常用漢字表外読みのため、新聞などでは「虚をつく」とひらがなで書かれることが多いです。「虚を突く」も使われますが、本来の意味からすると「衝く」が正確です。
「鼻をつく臭い」はどの漢字?
「鼻を衝く」と書きます。嗅覚を強く刺激するという意味なので「衝」を使います。ただし常用漢字表外読みのため「鼻をつく」とひらがなで書いても問題ありません。
「杖をつく」と「杖を突く」どちらが正しい?
「杖を突く」が正しい表記です。杖の先を地面に当てるという物理的な動作なので「突く」を使います。同様に「ひざを突く」「肘を突く」なども「突」を使います。