「インフレ」は物価が継続的に上昇する現象、「デフレ」は物価が継続的に下落する現象です。「スタグフレーション」は景気が停滞しているにもかかわらず物価が上昇する現象で、インフレとデフレの悪いところを併せ持つ最も厳しい経済状態です。
| 項目 | インフレ | デフレ | スタグフレーション |
|---|---|---|---|
| 物価 | 上昇↑ | 下落↓ | 上昇↑ |
| 景気 | 拡大傾向 | 停滞傾向 | 停滞↓ |
| お金の価値 | 下がる | 上がる | 下がる |
| 賃金 | 上がりやすい | 下がりやすい | 上がらない |
| 消費者心理 | 今のうちに買おう | もっと安くなるかも | 買いたくても買えない |
| 語源 | inflation(膨張) | deflation(収縮) | stagnation+inflation |
「インフレ」の意味と使い方
「インフレ」は「インフレーション」の略で、物価が継続的に上昇する現象を指します。物価が上がるということは、同じ金額で買えるモノの量が減ることを意味するため、「お金の価値が下がる」とも表現されます。
インフレには大きく分けて2つのタイプがあります。
ディマンドプル・インフレ
需要が供給を上回ることで起こるインフレです。景気が良くなり、消費者の購買意欲が高まると、モノやサービスの需要が増加します。供給が追いつかないと価格が上昇し、インフレになります。このタイプは景気拡大と連動するため「良いインフレ」とも呼ばれます。
コストプッシュ・インフレ
原材料価格や人件費などの生産コストが上昇することで起こるインフレです。企業がコスト上昇分を価格に転嫁するため物価が上がります。景気拡大を伴わないため「悪いインフレ」とも呼ばれ、スタグフレーションの原因にもなります。
- 原油価格の高騰により、世界的なインフレが進行している。
- 日本銀行は年2%のインフレ目標を掲げている。
- インフレが続くと、貯金の実質的な価値が目減りする。
「デフレ」の意味と使い方
「デフレ」は「デフレーション」の略で、物価が継続的に下落する現象を指します。物価が下がるということは、同じ金額でより多くのモノが買えることを意味するため、「お金の価値が上がる」とも表現されます。
一見すると消費者にとって良いことのように思えますが、デフレには深刻な問題があります。物価が下がり続けると「もっと安くなるだろう」と消費者が買い控えを始め、企業の売上が減少します。すると企業は従業員の給与を削減したり、雇用を減らしたりするため、さらに消費が冷え込むという悪循環に陥ります。この悪循環を「デフレスパイラル」と呼びます。
日本はバブル崩壊後の1990年代半ば以降、約30年にわたってデフレ基調が続いていました。この期間は「失われた30年」とも呼ばれています。
- 日本経済は長年デフレに苦しんできた。
- デフレ脱却のため、政府は金融緩和政策を進めた。
- デフレ下では現金の価値が相対的に高まる。
「スタグフレーション」の意味と使い方
「スタグフレーション」は、景気が停滞(スタグネーション)しているにもかかわらず、物価が上昇(インフレーション)する現象を指します。「スタグネーション」と「インフレーション」を組み合わせた合成語です。
通常、景気が悪くなると需要が減少するため物価は下がります。しかし、原油価格の高騰や供給ショックなどの外的要因によって、不景気にもかかわらず物価が上昇することがあります。これがスタグフレーションです。
スタグフレーションは「インフレの物価高」と「デフレの景気停滞」という両方の悪い面を併せ持つため、生活者にとって最も厳しい経済状態といえます。賃金が上がらないのに物価だけが上がり続けるため、家計が圧迫されます。
- 1970年代のオイルショックで、日本はスタグフレーションに陥った。
- 景気後退と物価高が同時に進むスタグフレーションへの懸念が高まっている。
- スタグフレーション下では、従来の経済政策が効きにくくなる。
語源・由来
3つの言葉はいずれも英語に由来します。
「インフレーション(inflation)」は、ラテン語の「inflare(膨らませる)」に由来し、「膨張」を意味します。物価が膨らんでいく様子を表しています。
「デフレーション(deflation)」は、「de-(離れる、下がる)」と「flare(膨らむ)」を組み合わせた言葉で、「収縮」を意味します。インフレの反対で、物価が縮んでいく様子を表しています。
「スタグフレーション(stagflation)」は、1960年代のイギリスで生まれた造語です。「スタグネーション(stagnation=停滞)」と「インフレーション(inflation)」を合成した言葉で、景気停滞と物価上昇が同時に起こる異常な経済状態を表現するために作られました。
日本経済との関係
日本は戦後、これら3つの経済現象をすべて経験しています。
1970年代:スタグフレーション
1973年の第1次オイルショックでは、原油価格が約4倍に高騰し、日本はスタグフレーションに陥りました。「狂乱物価」と呼ばれるほどの激しいインフレが起こり、1974年の消費者物価上昇率は20%を超えました。
1990年代〜2010年代:デフレ
バブル崩壊後、日本は長期のデフレに苦しみました。物価が上がらず、賃金も上がらない状態が続き、「失われた30年」と呼ばれる経済停滞期となりました。
2020年代:インフレへの転換
コロナ禍からの経済回復、ウクライナ情勢、円安などの影響で、日本もインフレ傾向に転じています。2022年以降、食料品や光熱費を中心に物価上昇が続いています。
よくある質問
「インフレ」と「デフレ」、どちらが良い状態?
一概には言えませんが、緩やかなインフレ(年2%程度)は健全な経済成長のサインとされています。急激なインフレや長期のデフレは、どちらも経済に悪影響を及ぼします。
「スタグフレーション」はなぜ最悪の状態と言われる?
景気を良くしようとすると物価がさらに上がり、物価を抑えようとすると景気がさらに悪化するという板挟み状態になり、従来の経済政策が効きにくくなるためです。
「ハイパーインフレ」とは何が違う?
「ハイパーインフレ」は、インフレが極端に進行した状態を指します。一般的に月50%以上の物価上昇が目安とされ、お金がほぼ価値を失う深刻な状態です。
「リフレ」とはどういう意味?
「リフレーション」の略で、デフレから脱却して緩やかなインフレ状態に戻すことを指します。金融緩和などの政策でインフレ率を適度な水準に引き上げることを目指す考え方です。