目次
  1. 「被疑者」の意味と使い方
  2. 「容疑者」の意味と使い方
  3. 「被告人」の意味と使い方
  4. 刑事手続きの流れと呼び名の変化
  5. 「被告人」と「被告」の違い
  6. 関連用語の解説
  7. よくある質問
結論

「被疑者」は犯罪の疑いをかけられて捜査対象となっている人を指す法律用語です。「容疑者」は被疑者と同意味ですが、報道機関が使うマスコミ用語で、法律用語でありません。「被告人」は検察官に起訴されて刑事裁判にかけられた人を指す法律用語です。いずれも有罪判決が確定するまでは「犯人」ではありません。

被疑者

ひぎしゃ
法律用語
起訴前の捜査対象者

容疑者

ようぎしゃ
報道用語
=被疑者(マスコミ用語)

被告人

ひこくにん
法律用語
起訴後・裁判中の人
項目 被疑者 容疑者 被告人
用語の種類 法律用語 報道用語 法律用語
段階 起訴前 起訴前 起訴後
使う場面 警察・検察・裁判所 新聞・テレビ報道 警察・検察・裁判所・報道
保釈請求 できない できない できる
推定無罪 適用 適用 適用

「被疑者」の意味と使い方

「被疑者」は、犯罪の疑いをかけられて捜査対象となっているが、まだ起訴されていない人を指す法律用語です。刑事訴訟法に規定されている正式な用語で、警察・検察・裁判所・弁護士が使います。

「被」は「〜を受ける」、「疑」は「疑い」という意味で、文字どおり「疑いを受けた者」を表しています。

被疑者はあくまで「犯罪の疑いがある人」であり、有罪判決が確定するまでは犯人ではありません。これを「推定無罪の原則」といいます。そのため、法律上は「犯人逮捕」という表現は正確ではありません。

「被疑者」を使った例
  • 被疑者は黙秘権を行使した。
  • 警察は被疑者を取り調べている。
  • 被疑者の身柄は警察署の留置場に置かれる。
  • 検察官は被疑者を起訴するか不起訴にするかを判断する。

「容疑者」の意味と使い方

「容疑者」は、被疑者と同じ意味で報道機関が使うマスコミ用語です。法律用語ではなく、刑事訴訟法などの法律には「容疑者」という言葉は存在しません。

なぜ報道機関は「被疑者」ではなく「容疑者」を使うのでしょうか。主な理由は以下の2つです。

1. 「被疑者」と「被害者」の聞き間違いを防ぐため

「被疑者(ヒギシャ)」と「被害者(ヒガイシャ)」は音が非常に似ています。テレビやラジオで聞き間違えると、正反対の立場の人を混同してしまいます。「容疑者」という言葉を使うことで、この混乱を避けています。

2. 呼び捨てを避けるため

報道で名前を呼び捨てにすると、有罪であるかのような印象を与えてしまいます。「〇〇容疑者」と肩書きをつけることで、まだ有罪が確定していないことを示しています。

「容疑者」を使った例(報道)
  • 警視庁は〇〇容疑者(45)を逮捕した。
  • 容疑者は容疑を否認している。
  • 〇〇容疑者は詐欺の疑いで逮捕された。

「被告人」の意味と使い方

「被告人」は、検察官によって起訴され、刑事裁判にかけられている人を指す法律用語です。被疑者が起訴されると、呼び名が「被告人」に変わります。

「被告人」も有罪判決が確定するまでは「推定無罪の原則」が適用されます。起訴されたからといって、犯人と決まったわけではありません。

被告人になると、身柄が警察の留置場から法務省所管の「拘置所」に移されることが多いです。また、被告人には保釈を請求する権利があります(被疑者にはありません)。

「被告人」を使った例
  • 検察官は被告人に懲役5年を求刑した。
  • 被告人は無罪を主張している。
  • 被告人は保釈を請求した。
  • 裁判官は被告人に有罪判決を言い渡した。

刑事手続きの流れと呼び名の変化

刑事事件の手続きが進むにつれて、呼び名が変わっていきます。

【刑事手続きの流れ】

  1. 捜査開始 → 「被疑者」(報道では「容疑者」)
  2. 逮捕 → 「被疑者」のまま
  3. 起訴 → 「被告人」に変わる(報道では「〇〇被告」)
  4. 有罪判決確定 → 「受刑者」に変わる

なお、不起訴になった場合は「被告人」にはならず、釈放されます。

「被告人」と「被告」の違い

報道では「〇〇被告」という表現をよく見かけますが、これは正確ではありません。

「被告人」刑事裁判で起訴された人(法律用語)
「被告」= 民事裁判で訴えられた人(法律用語)

「被告」は民事事件の用語であり、刑事事件には使いません。報道で「〇〇被告」と呼ぶのは、字数を短くするための省略表現であり、法律上は正しくありません。正式には「被告人」です。

関連用語の解説

重要参考人

事件の関係者として事情を聞かれる人のこと。被疑者とは異なり、捜査対象ではありません。ただし、重要参考人が後に被疑者になることもあります。

書類送検

逮捕せずに、事件の捜査書類だけを検察官に送ること。マスコミ用語であり、法律用語では「送致」といいます。

受刑者

有罪判決が確定し、刑務所で刑に服している人のこと。

前科と前歴

  • 前科:有罪判決を受けた経歴
  • 前歴:被疑者として捜査対象になった経歴(不起訴でも残る)

よくある質問

Q
逮捕されたら「犯人」になる?
A
なりません。逮捕されても、有罪判決が確定するまでは「推定無罪の原則」により、犯人として扱われることはありません。被疑者・被告人はあくまで「疑いがある人」です。
Q
なぜ報道は「被疑者」ではなく「容疑者」を使う?
A
「被疑者」と「被害者」の音が似ていて聞き間違いを防ぐためです。また、呼び捨てを避けて「〇〇容疑者」と肩書きをつけることで、まだ有罪が確定していないことを示す意図もあります。
Q
「被告」と「被告人」は同じ?
A
違います。「被告人」は刑事裁判で起訴された人、「被告」は民事裁判で訴えられた人です。報道で「〇〇被告」と言うのは省略表現であり、法律上は「被告人」が正しい呼び方です。
Q
被疑者と被告人で違う権利は?
A
大きな違いは「保釈」です。被告人は保釈を請求して身柄の解放を求めることができますが、被疑者にはその権利がありません。
Q
不起訴になったら前科はつく?
A
前科はつきません。前科は有罪判決を受けた場合につくものです。ただし、被疑者として捜査対象になった「前歴」は残ります。