目次
  1. 「派遣」の意味と使い方
  2. 「出向」の意味と使い方
  3. 語源・由来
  4. 雇用関係の違い
  5. 出向の種類
  6. 偽装出向に注意
  7. よくある質問
結論

「派遣」は派遣会社との雇用関係のみを維持し、派遣先企業で働く形態です。「出向」は出向元企業との雇用関係を維持しながら、出向先企業とも雇用関係を結んで働く形態です。派遣は「労働力の提供」が目的であるのに対し、出向は「人材育成」や「キャリア開発」などが主な目的となります。

派遣

はけん
派遣元との雇用関係のみ
労働力の提供が目的

出向

しゅっこう
二重の雇用関係(在籍出向)
人材育成などが目的
項目 派遣 出向(在籍出向)
雇用関係 派遣元のみ 出向元+出向先(二重)
指揮命令権 派遣先にあり 出向先にあり
主な目的 労働力の提供 人材育成・キャリア開発・雇用調整
期間制限 あり(原則3年) なし
適用法令 労働者派遣法 特別な法律なし
給与の支払い 派遣元 出向元または出向先(契約による)

「派遣」の意味と使い方

「派遣」は、派遣会社(派遣元)が雇用する労働者を、派遣先企業に送り、派遣先の指揮命令のもとで働かせる形態です。労働者派遣法では「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させること」と定義されています。

派遣の特徴は、雇用関係が派遣元との間にのみ存在する点です。派遣労働者は派遣元と雇用契約を結び、給与や社会保険は派遣元から提供されます。派遣先企業との間には雇用関係はなく、業務上の指揮命令関係のみが存在します。

派遣は主に「労働力の提供」を目的としており、繁忙期の一時的な人員補充や、専門スキルを持つ人材の確保などに活用されます。労働者派遣法により、同一の派遣先で働ける期間は原則として3年までと定められています。

「派遣」を使った例文
  • 繁忙期に備えて、派遣スタッフを3名受け入れることにした。
  • 彼女派遣社員として5年間、同じ会社で働いている。
  • 派遣契約の更新時期が近づいてきた。

「出向」の意味と使い方

「出向」は、出向元企業の社員が、出向元との雇用関係を維持したまま、出向先企業で働く形態です。一般的に「在籍出向」と呼ばれるこの形態では、労働者は出向元と出向先の両方と雇用関係を持ちます。

出向の特徴は、二重の雇用関係が成立する点です。労働者は出向元企業に「籍」を置いたまま、出向先企業の指揮命令を受けて働きます。給与は出向元が支払うケースと出向先が支払うケースがあり、契約によって異なります。

出向の目的は多岐にわたりますが、主に「人材育成」「キャリア開発」「技術・ノウハウの移転」「グループ会社間の人材交流」「雇用調整」などが挙げられます。派遣とは異なり、出向には法律上の期間制限がありません。

「出向」を使った例文
  • 来月から子会社へ出向することになった。
  • 彼は3年間の出向を終えて、本社に戻ってきた。
  • グループ会社間で人材の出向を積極的に行っている。

語源・由来

「派遣」は「派」(分かれて行く)と「遣」(つかわす)を組み合わせた言葉で、もともとは人を他の場所に送り出すことを意味していました。労働者派遣という意味では、1985年に労働者派遣法が制定されて以降、広く使われるようになりました。

「出向」は「出」(出る)と「向」(向かう)を組み合わせた言葉で、ある場所から出て別の場所へ向かうことを意味します。企業間の人事異動を指す言葉として使われるようになったのは、日本の企業グループ経営が発展した戦後以降と考えられています。

雇用関係の違い

派遣と出向の最も重要な違いは「雇用関係」の構造です。

派遣の雇用関係

派遣では、労働者と派遣元(派遣会社)の間にのみ雇用関係が存在します。派遣先企業との間には雇用関係はなく、指揮命令関係のみがあります。

この構造により、派遣労働者の給与・社会保険・福利厚生は派遣元が負担し、派遣先は派遣元に対して派遣料金を支払います。派遣先は労働者を直接雇用する責任を負いません。

出向(在籍出向)の雇用関係

在籍出向では、労働者は出向元と出向先の両方と雇用関係を持ちます。出向元との雇用契約は維持されたまま、出向先とも新たに雇用関係を結びます。

この「二重の雇用関係」により、出向者は出向元の社員としての身分を保持しながら、出向先の指揮命令を受けて働きます。給与や社会保険の負担は、出向元と出向先の契約によって決まります。

出向の種類

出向には「在籍出向」と「転籍出向」の2種類があります。

在籍出向

出向元との雇用関係を維持したまま、出向先で働く形態です。一般的に「出向」といえば、この在籍出向を指します。出向期間が終われば、出向元に戻ることが前提となっています。

転籍出向

出向元との雇用関係を解消し、出向先と新たに雇用契約を結ぶ形態です。「転籍」とも呼ばれ、実質的には転職に近い形態です。在籍出向とは異なり、出向元に戻ることは想定されていません。

偽装出向に注意

「偽装出向」とは、実態は労働者派遣であるにもかかわらず、出向の形式を装うことです。派遣事業を行うには厚生労働大臣の許可が必要ですが、出向には許可が不要です。この規制を逃れるために、派遣を出向と偽装するケースがあります。

偽装出向と判断される可能性があるケースとして、以下のような例が挙げられます。

  • 出向の目的が「労働力の提供」のみで、人材育成などの目的がない
  • 出向元と出向先に資本関係やグループ関係がない
  • 出向元が出向を業として(反復継続して利益を得る目的で)行っている
  • 出向者の選定や配置を出向先が決めている

偽装出向は職業安定法で禁止されている「労働者供給事業」に該当し、違法となります。

よくある質問

Q
「出向」と「転勤」の違いは?
A
「転勤」は同じ会社内での勤務地の異動を指します。「出向」は別の会社で働くことを指し、雇用関係が変わる点で転勤とは異なります。
Q
「出向」と「転籍」は同じ意味?
A
異なります。「出向」は出向元との雇用関係を維持する「在籍出向」を指すことが一般的です。「転籍」(転籍出向)は出向元との雇用関係を解消し、出向先に完全に移籍する形態です。
Q
派遣には期間制限があるのに、出向にはないのはなぜ?
A
派遣は労働者派遣法で規制されており、派遣労働者の雇用安定のため期間制限が設けられています。出向は特別な法律で規制されておらず、人材育成など正当な目的がある限り、期間制限はありません。
Q
「派遣社員」「出向社員」という言い方は正しい?
A
どちらも一般的に使われる表現です。正式には「派遣労働者」「出向者」という言い方もあります。「派遣社員」は派遣元の社員、「出向社員」は出向元の社員という意味で使われます。