「からし」と「マスタード」は、どちらもアブラナ科のからし菜の種子から作られますが、原料となる種子の種類と製造方法が異なります。からしは「オリエンタルマスタード」の種子を水で練ったもので、鼻にツーンとくる強い辛みが特徴。マスタードは「イエローマスタード」などの種子に酢や砂糖を加えて作り、マイルドな辛みが特徴です。
| 項目 | からし | マスタード |
|---|---|---|
| 原料の種子 | オリエンタルマスタード | イエロー・ブラウンマスタードなど |
| 製造方法 | 種子を粉末にして水で練る | 種子に酢・砂糖・ワインなどを加える |
| 辛さの特徴 | 鼻にツーンと抜ける強い辛み | マイルドで酸味のある辛み |
| 使用量 | 少量で薬味として使う | たっぷりソースとして使う |
| 合う料理 | おでん、納豆、とんかつ、シュウマイ | ホットドッグ、ソーセージ、サンドイッチ |
「からし」の意味と使い方
「からし」は、「和からし」とも呼ばれる日本で古くから使われてきた香辛料です。アブラナ科のからし菜の種子のうち、「オリエンタルマスタード」という種類を原料としています。
製造方法はシンプルで、種子から油分を取り除いてすり潰した「粉からし」を、水またはぬるま湯で溶いて練ります。40℃くらいのぬるま湯で練ると、辛み成分がよく出るとされています。調味料は一切加えないため、種子本来の強い辛みをダイレクトに感じられます。
からしの最大の特徴は、鼻にツーンと抜ける刺激的な辛みです。これは種子に含まれる酵素「ミロシナーゼ」が水と反応して「アリルイソチオシアネート」という辛み成分を生成するためです。揮発性が高く、少量でも強い辛みを感じられます。
日本では薬味として少量ずつ使われることが多いため、チューブ入りの製品が発達しました。これは世界的に見ても珍しい形態です。
- おでん – 練りがらしを添えて風味をプラス
- 納豆 – 付属の小袋からしでピリッとアクセント
- とんかつ・豚の角煮 – 脂っこさを引き締める
- シュウマイ・春巻き – 中華料理の定番の薬味
- からし和え・からし漬け – 野菜料理の風味付けに
「マスタード」の意味と使い方
「マスタード」は、「洋からし」とも呼ばれる欧米で発達した調味料です。原料となる種子は「イエローマスタード」「ブラウンマスタード」「ブラックマスタード」など、からしとは異なる種類が使われます。
製造方法の最大の違いは、種子に酢、砂糖、ワイン、塩、スパイスなどの調味料を加えて加工する点です。種子をすり潰してなめらかにしたものや、粒を残したまま加工したものなど、バリエーションが豊富です。
マスタードの辛みは、からしに比べてマイルドで穏やかです。これは原料のイエローマスタードに含まれる辛み成分の揮発性が低いためです。また、酢を加えることで辛みが抑えられ、酸味と甘みが加わってバランスの取れた味わいになります。
欧米ではソースとして比較的多めに使われるため、瓶やボトル入りで販売されるのが一般的です。
- ホットドッグ・ハンバーガー – アメリカンフードの定番
- ソーセージ・フランクフルト – 肉の旨みを引き立てる
- サンドイッチ – パンに塗ってアクセントに
- ローストビーフ – 粒マスタードを添えて
- ドレッシング・ソース – 料理の隠し味として
語源・由来
「からし」の歴史
からしの歴史は古く、日本では奈良時代から香辛料として貴族の間で使われていました。当時は薬味として、からし菜の葉の部分が使われていたとされています。その後、種子を使った現在のような「からし」が広まり、病気の治癒や戦乱の平治を祈願する際にも使われるなど、食用以外にも活用されてきました。
「マスタード」の歴史
マスタードの歴史はさらに古く、紀元前から使われていたと考えられています。古代ギリシャの数学者ピタゴラスは、マスタードをサソリの刺傷の中和剤として使うと述べていたそうです。
13世紀には、フランスのディジョンで現在のようなマスタードペーストが作られるようになりました。ブドウの産地であるブルゴーニュ地方に近いため、ワインやワインビネガーを使ったマスタードが発達しました。1853年にはマスタード種子の処理が自動機械化され、低価格での提供が可能になりました。
なお、英語の「Mustard」は、ラテン語で「燃える果汁」を意味する「mustum ardens」に由来するとされています。
マスタードの種類
マスタードには産地や製法によってさまざまな種類があります。代表的なものをご紹介します。
イエローマスタード(アメリカンマスタード)
粉マスタードにウコン(ターメリック)を加えた鮮やかな黄色のマスタード。ワインビネガーが含まれ、やや酸味があります。辛みが少なく、ホットドッグやハンバーガーの定番です。
ディジョンマスタード
フランス・ブルゴーニュ地方のディジョンで作られる高級マスタード。種子の外皮を取り除いてすり潰し、ワインやワインビネガーで練ります。なめらかな舌触りとキレのある味わいが特徴で、ドレッシングや煮込み料理に適しています。
粒マスタード
種子をすり潰さず、粒のまま酢や調味料と合わせたマスタード。プチプチとした食感が楽しめ、ソーセージやローストビーフに添えたり、ドレッシングに使ったりします。
ハニーマスタード
マスタードにはちみつを加えた甘口タイプ。辛みがマイルドで、お子様でも食べやすい味わい。チキンナゲットのディップソースなどに人気です。
イギリスマスタード
粉マスタードに砂糖、塩、小麦粉、ウコンと水分を加えたもの。ワインビネガーは入っておらず、辛みが強いのが特徴。脂肪分の多い魚料理によく合います。
「本からし」とは?
スーパーで見かける「本からし」は、和からしと洋からしをブレンドしたものです。
和からしの強い辛みを少し抑えつつ、さまざまな料理に合うよう調整されています。エスビー食品の「本からし」やハウス食品の「からし」がこれにあたります。
一方、「和からし」と明記されている製品は、オリエンタルマスタードを主原料とした辛みの強いタイプです。おでんや納豆など、ツーンとくる辛みを楽しみたい場合は「和からし」を選ぶとよいでしょう。
チューブ入りの練りからしは、実は日本独自に発達した製品形態です。薬味として少量ずつ使う日本の食文化に合わせて、何度使っても辛みが飛散しないよう工夫されています。
からしとマスタードは代用できる?
からしとマスタードは互いに代用可能ですが、料理によっては味わいが変わるので注意が必要です。
マスタードの代わりにからしを使う場合
からしは辛みが強いので、少量から試してください。マスタードの酸味や甘みを再現したい場合は、からしに酢や砂糖を少量加えて味を調整するとよいでしょう。
からしの代わりにマスタードを使う場合
マスタードは辛みがマイルドなので、からし特有のツーンとした刺激は弱くなります。また、酢や砂糖の風味が加わるため、和食には少し違和感を覚えることもあります。おでんや納豆にはやはり「からし」がおすすめです。
よくある質問
からしとマスタードの辛さはどちらが強い?
からし(和からし)の方が辛みが強いです。鼻にツーンと抜ける刺激的な辛さが特徴で、少量でも強く感じます。マスタードは酢が加えられているため、辛みが抑えられてマイルドです。
なぜからしはチューブ入りが多いの?
日本では薬味として少量ずつ使う習慣があるためです。チューブなら適量を絞り出せ、何度使っても辛みが飛散しません。欧米のマスタードは量を多く使うため、瓶やボトル入りが一般的です。
粒マスタードとペーストのマスタードの違いは?
粒マスタードは種子をすり潰さず粒のまま加工したもので、プチプチとした食感が楽しめます。ペースト状のマスタードは種子をすり潰してなめらかに仕上げたものです。用途や好みで使い分けましょう。
おでんにマスタードをつけてもいい?
食べられますが、本来のおでんの味わいとは異なります。おでんには鼻にツーンとくる「からし」の辛みがよく合います。マスタードだと酸味や甘みが加わり、違う味わいになります。
ホットドッグには和からしでもいい?
使えますが、和からしは辛みが強いので少量にしましょう。実は、マスタードが普及する前の日本では、洋食にも和からしが代用されていました。老舗の喫茶店のサンドイッチに和からしが使われているのはその名残です。