「処方」は医師が薬の種類・量・服用法を決めて指示すること、「調剤」は薬剤師が処方箋に基づいて薬を揃え、患者に渡すことです。つまり「処方」は医師の仕事、「調剤」は薬剤師の仕事という違いがあります。
| 項目 | 処方 | 調剤 |
|---|---|---|
| 基本的な意味 | 薬の種類・量・服用法を決めて指示する | 処方箋に基づいて薬を揃え患者に渡す |
| 行う人 | 医師・歯科医師・獣医師 | 薬剤師 |
| 場所 | 病院・診療所 | 調剤薬局(保険薬局) |
| 成果物 | 処方箋 | 調剤された薬 |
| 使用例 | 解熱剤を処方する | 処方箋に基づいて調剤する |
「処方」の意味と使い方
「処方」とは、医師・歯科医師・獣医師が患者の病状に応じて、薬の種類や分量、服用方法を決めて指示することです。
病院や診療所で診察を受けた後、医師が「この症状にはこの薬が効果的だろう」と判断し、必要な薬を選んで指示を出す行為が「処方」にあたります。この指示内容を文書にしたものが「処方箋(しょほうせん)」です。
なお「処方」には、医療以外の場面で「物事を処理する方法」という意味もあります。「経済再建への処方箋」のように比喩的に使われることもあります。
- 医師が風邪の患者に解熱剤を処方した。
- 処方された薬は、必ず用法・用量を守って服用してください。
- この症状には抗生物質を処方する必要があります。
- 日本経済の問題に対する処方箋が議論されている。
「調剤」の意味と使い方
「調剤」とは、医師から発行された処方箋に基づいて、薬剤師が医薬品を揃え、患者に交付する業務のことです。
調剤は基本的に薬剤師の独占業務とされています。薬剤師は処方箋の内容を確認し、薬の飲み合わせや用量に問題がないかをチェックした上で、薬を準備して患者に渡します。疑問点があれば処方した医師に問い合わせる「疑義照会(ぎぎしょうかい)」を行うこともあります。
かつては薬を混ぜ合わせる「調合」の意味合いが強かったものの、現在では服薬指導や薬歴管理なども含めた一連の業務を指すようになっています。
- 処方箋を持って調剤薬局に行った。
- 薬剤師が処方箋の内容を確認してから調剤を行う。
- 調剤には10分ほどお時間をいただきます。
- この薬局は調剤だけでなく健康相談にも対応している。
語源・由来
「処方」は「処」と「方」で構成されています。「処」には「物事をとりさばく」「決める」という意味があり、「方」は「方法」「やり方」を意味します。つまり「処方」は「処置の方法」「物事を処理するやり方」という意味が原義です。ここから転じて、医療の分野では「薬による治療方法を指示すること」を表すようになりました。
一方「調剤」は「調」と「剤」で構成されています。「調」は「ととのえる」「調和させる」、「剤」は「薬」を意味します。つまり「調剤」は「薬をととのえる」という意味になります。かつては複数の生薬や薬品を配合して薬を作る作業を指していましたが、現在は既製の医薬品を処方箋通りに揃える業務全般を指すようになりました。
「医薬分業」との関係
「処方」と「調剤」が別々の専門家によって行われる仕組みを「医薬分業」といいます。
医薬分業の起源は1240年、神聖ローマ帝国のフリードリヒ2世の時代に遡ります。当時、王侯貴族が主治医によって毒殺されることを恐れ、薬のチェックを別の専門家に行わせたことが始まりとされています。
日本では明治時代にドイツの制度を参考に導入されましたが、長らく医師が診察から投薬まで一貫して行う「院内処方」が主流でした。1974年の診療報酬改定で処方箋料が大幅に引き上げられたことをきっかけに医薬分業が進み始め、現在は処方箋受取率が75%を超えています。
医薬分業により、医師と薬剤師がそれぞれの専門性を発揮してダブルチェックを行うことで、薬の安全性が高まるとされています。
よくある質問
「処方薬」と「調剤薬」は同じ意味?
ほぼ同じ意味で使われますが、厳密には視点が異なります。「処方薬」は医師が処方した薬という視点、「調剤薬」は薬剤師が調剤した薬という視点で表現しています。どちらも処方箋に基づいて提供される医療用医薬品を指します。
医師が自分で調剤することはできる?
法律上、医師・歯科医師・獣医師は自ら処方した処方箋に限り、調剤を行うことが認められています。これが「院内処方」と呼ばれる形態です。ただし現在は医薬分業が進み、多くの医療機関で院外の調剤薬局に処方箋を出す「院外処方」が主流となっています。
「調剤」と「調合」の違いは?
「調合」は複数の成分を混ぜ合わせて薬を作ることを指し、「調剤」の一工程です。現代の調剤業務は、処方箋の確認から薬の準備、服薬指導、薬歴管理までの一連の流れを含むため、「調合」より広い意味を持ちます。
「処方箋」はなぜ「処方せん」と書かれることがある?
「箋」の字が2010年に常用漢字に追加されるまで、法令では「処方せん」と平仮名で表記されていました。そのため現在も薬局の看板などで「処方せん受付」という表記が残っています。意味は「処方箋」と同じです。