「伺う」は訪問先に敬意を払う相手がいる場合に使う謙譲語(謙譲語Ⅰ)です。「参る」は訪問先に敬意を払う相手がいない場合や、単に聞き手に丁重に述べる場合に使う謙譲語(謙譲語Ⅱ/丁重語)です。取引先や目上の人のもとへ行く場合は「伺う」、それ以外の場所へ行く場合は「参る」と覚えましょう。
| 項目 | 伺う | 参る |
|---|---|---|
| 敬語の種類 | 謙譲語Ⅰ | 謙譲語Ⅱ(丁重語) |
| 敬意の対象 | 訪問先の相手 | 聞き手 |
| 使う場面 | 敬う人のもとへ行く | 敬う人がいない場所へ行く |
| 「行く」以外の意味 | 聞く、尋ねる | 来る、降参する |
| 使用例 | 御社に伺います | 出張で大阪に参ります |
「伺う」の意味と使い方
「伺う」は、訪問先に敬意を払う相手がいる場合に使う謙譲語です。文化庁の「敬語の指針」では「謙譲語Ⅰ」に分類されており、自分がへりくだることで訪問先の相手を立てる表現です。
「行く」の意味のほか、「聞く」「尋ねる」の意味でも使われます。いずれの意味でも、敬意を払う相手に対して使う点は共通しています。
「行く」の意味で使う場合
- 明日、御社に伺います。
- 先生のお宅に伺ってもよろしいでしょうか。
- 来週、本社の田中部長のところに伺う予定です。
「聞く・尋ねる」の意味で使う場合
- 詳しいお話を伺いたいのですが。
- ご都合のよい日時を伺ってもよろしいでしょうか。
- お名前を伺ってもよろしいですか。
- 14時に御社へ伺いますので、よろしくお願いいたします。
- 改めてご挨拶に伺いたく存じます。
- その件については、担当の佐藤より伺っております。
- ご意見を伺えれば幸いです。
「参る」の意味と使い方
「参る」は、訪問先に敬意を払う相手がいない場合や、単に聞き手に丁重に述べる場合に使う謙譲語です。文化庁の「敬語の指針」では「謙譲語Ⅱ(丁重語)」に分類されています。
「伺う」が「訪問先の相手」を立てるのに対し、「参る」は「今話している相手(聞き手)」に対して丁重に述べる表現です。そのため、敬う必要のない場所へ行く場合や、第三者(部下など)が行く場合にも使えます。
「行く」の意味のほか、「来る」の意味でも使われます。また、「参った」という形で「降参する」「困る」の意味になることもあります。
「行く」の意味で使う場合
- 明日は出張で大阪に参ります。
- 弟のところに参ります。
- 担当の者が参りますので、少々お待ちください。
「来る」の意味で使う場合
- 電車で参りました。
- こちらへは初めて参りました。
- すぐに担当者が参りますので、少々お待ちください。
- 来週は研修で東京に参ります。
- 本日は電車で参りました。
- 今後とも精進して参ります。
語源・由来
「伺う」は、古くは「うかがふ」と表記され、「窺う(うかがう)」と同じ語源とされています。「窺う」には「様子をそっと見る」「機会を待つ」という意味があり、そこから「相手の様子を見て、そっと近づく」→「訪問する」「尋ねる」という意味が生まれました。現代では「伺う」と「窺う」は漢字で区別され、敬語として使う場合は「伺う」と書きます。
「参る」は、神仏への参拝を意味する「参詣(さんけい)」の「参」に由来します。神仏のもとへ行くことを「参る」と表現したことから、目上の人のもとへ行く場合にも使われるようになりました。時代とともに「相手のもとへ行く」という意味が薄れ、現代では「聞き手に丁重に述べる」という用法が中心になっています。
謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱの違い
「伺う」と「参る」の使い分けを理解するには、謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱ(丁重語)の違いを知っておくと便利です。
2007年に文化審議会が発表した「敬語の指針」では、従来の「謙譲語」を2種類に分けて説明しています。
| 分類 | 謙譲語Ⅰ | 謙譲語Ⅱ(丁重語) |
|---|---|---|
| 敬意の向き | 行為の向かう相手を立てる | 聞き手に丁重に述べる |
| 「行く」の例 | 伺う | 参る |
| 「言う」の例 | 申し上げる | 申す |
| 「食べる」の例 | いただく | - |
使い分けの考え方
「訪問先に敬う人がいるか?」を基準にすると分かりやすくなります。
- 訪問先に敬う人がいる → 「伺う」
- 訪問先に敬う人がいない → 「参る」
間違いやすいケース
敬う必要のない場所に「伺う」を使う
「伺う」は訪問先の相手を立てる表現です。敬意を払う相手がいない場所に「伺う」を使うのは不自然です。
- お手洗いに伺います。
- お手洗いに参ります。
- 弟のところに伺います。
- 弟のところに参ります。
第三者(部下など)の行動に「伺う」を使う
自社の部下が取引先に行く場合、部下の行動をへりくだって述べるには「参る」を使います。「伺う」を使うと、部下を立てることになってしまいます。
- 担当の田中が伺います。
- 担当の田中が参ります。
※ただし、「田中が御社に伺います」のように、訪問先(御社)を明示して敬意を示す形であれば「伺う」でも可とする見解もあります。
二重敬語に注意
「伺う」は謙譲語なので、さらに謙譲表現を重ねると二重敬語になります。
- 伺わせていただきます(二重敬語)
- 伺います
- お伺いします(本来は二重敬語だが、慣習として定着)
なお、「お伺いします」「お伺いいたします」は文化庁の「敬語の指針」で「習慣として定着している表現」とされており、ビジネスシーンで使用しても問題ありません。
ビジネスでの使い分け
ビジネスシーンでは「伺う」と「参る」の使い分けが頻繁に問われます。以下の表を参考にしてください。
| 場面 | 適切な表現 |
|---|---|
| 取引先に行く | 御社に伺います |
| 上司のもとへ行く | 部長のところに伺います |
| 出張で地方に行く | 大阪に参ります |
| 部下が取引先に行く | 担当者が参ります |
| 自分がここに来た | 電車で参りました |
| 今後の意気込み | 精進して参ります |
よくある質問
面接で「御社に伺います」と「御社に参ります」どちらが正しい?
どちらも間違いではありませんが、「伺います」の方が適切です。「伺う」は訪問先の企業に敬意を示す表現なので、就活では「御社に伺います」を使うのが一般的です。
「お伺いします」は二重敬語?
文法的には「お」+謙譲語「伺う」で二重敬語にあたります。ただし、文化庁の「敬語の指針」で「習慣として定着している表現」とされており、ビジネスシーンで使用しても問題ありません。
「参る」に「聞く」の意味はある?
ありません。「参る」は「行く」「来る」の謙譲語として使われます。「聞く」の意味を持つのは「伺う」です。「お話を参ります」とは言わず、「お話を伺います」と言います。
「取り組んで参ります」の「参る」はどういう意味?
この場合の「参る」は「〜していく」を丁重に述べる表現です。「行く」の本来の移動の意味ではなく、「継続する」というニュアンスで使われています。ビジネスでは「精進して参ります」「努力して参ります」などの形でよく使われます。